第3部 審判
第24章 審判員
第73条 レフェリー、ジャッジ(以下審判員という)は、ボクシングに実際経験を有しもしくはボクシングに関する知識を有する者で、JBC・ルールのすべてに精通し、あらゆる関係方面から中立公正な立場にあり、かつJBCの資格テストに合格したものでなければならない。
審判員がルールの適用を誤り、もしくは審判上に大きな過失を犯した場合には、その羅免、停止または相当の処罰をされる。
JBCの役員は必要のある場合には審判を務めることができる。
第74条 審判員は、毎月1回以上または適宜会合して、審判技術の向上、また審判ルール並びにルールに規定されていない審判上の諸問題の解釈及びこれの処置、世界の審判ルールの審査、研究などをしなければならない。
第75条 審判員はその経歴、能力などに応じてA、B、Cの3クラスに分かれ、Aクラスはすべての試合、Bクラスは原則として6回戦まで、Cクラスは同じく4回戦までの審判に従事することができる。
それぞれの試合の審判員の担当割り当ては、JBCが決定し、当該試合開始の30分前より早く発表されてはならない。
第76条 審判員並びに試合役員は、なにびとといえども、試合中または試合後のいかなる場合でも自己の関与した審判の結果についてはなにびととも議論したり、釈明したり、または新聞、雑誌、放送関係者の質問に答え、もしくはこれに意見を発表してはならない。
発表せざるを得ない場合はJBCの許可を必要とす。
審判員ならびに試合役員は、試合場以外の場所においても、つねに中立的立場を保持せねばならない。
第25章 試合の勝敗
第77条 試合の審判は、3人制(レフェリーおよびジャッジ2名)又は4人制(ノンスコアリング・レフェリー及びスコアリング・ジャッジ3名)によって行われる。各審判員は勝敗の決定に対しては平等の1票を有する。2票以上を獲得した者を勝者とし、他を敗者とする。もし、それが2票に達しないときは、ドロー(引き分け)とする。
審判員の下した決定は最終である。審判員が下したすべて試合に関する判定は、採点表記載並びに集計の誤りおよび審判員に不名誉な事実があった場合を除き、JBC以外によって変更されることはない。
第78条 試合の得点はつぎの4項目を基準として評価、採点される。
1 クリーン・エフェクティブ・ヒット(正しいナックル・パートによる的確にして有効なる加撃。有効であるかないかは、主として相手に与えたダメージに基づいて判定される)
2 アグレッシブ(攻撃的であること。ただし加撃をともわない単なる乱暴な突進は攻撃とは認められない)
3 ディフェンス(巧みに相手の攻撃を無効ならしめるような防御。ただし攻撃と結びつかない単なる防御のための防御は採点されない)
4 リング・ゼネラルシップ(試合態度が堂々としてかつスポーツマンライクであり、戦術、戦法的に相手に優れ、巧みな試合運びによって相手を自己のペースにもっていくこと)
第79条 採点は『10点法』による。その分類は、試合内容によって次の4段階とする。
1 10=10(互角の場合)
2 10=9(若干の勝ちの場合)
3 10=8(ノック・ダウンまたはこれに近い状態をともなう明らかな勝ちの場合)
4 10=7(相手が全くグロッギーでノック・アウト寸前の圧倒的な勝ちの場合)
[備考] 10=6はつけず、この場合は当然TKOである。
第80条 試合判定の分類は次の6種類とする。
1 デシジョン(判定)
イ ラストラウンドの終了後、審判員の採点結果(第77条)によって勝敗が決定した場合。
ロ 偶然のバッティングによる負傷で試合続行不能となり、試合後半(10回戦以上は5ラウンド以降)で採点により勝敗が決定された場合。(TD=負傷判定)
ハ 試合開始後、ボクサーに関係なくして、予測できない事項で予定され試合が最後まで行われなくなり、それまでの採点で勝敗が決定されたた場合。(この場合、1−ロが準用される)。
2 ドロー(引き分け)
イ 審判員の採点が双方2票に達しない場合。
ロ 試合の前半(10回戦以上は4ラウンドまで)において起きた偶然のバッティングにより一方又は双方が試合続行不能の場合。
ハ 双方同時ダウンでカウント・テンでも立ち上がらない場合。
ニ 双方同時ダウンでかつ、双方が80条3項ハ(ダウン3ルール)に該当する場合で双方がカウント・テン前に立ち上がった場合。
ホ 偶然のバッティングによる負傷で続行不能のとき、前半(10回戦以上は4ラウンドまで)または後半(10回戦以上は5ラウンド以降)の採点の引き分けの場合(TD=負傷判定)。
3 ノックアウト(KO)
イ ダウンして10秒以内に試合を続行できない場合。
ロ ラウンド開始後10秒を経過しても試合をしない場合。
ハ 1ラウンド中に有効打による3度のダウンがあった場合。(4回戦は2度)
ニ 有効打によりリングよりフロアーに落ち20秒以内に戻れない場合。
ホ 有効打によるダウンで、レフェリーがカウント中セコンドがタオルを投入した場合
4 テクニカル・ノックアウト(TKO)
イ 有効打による負傷のため、これ以上試合続行は不適当とレフェリーが判断した場合。
ロ 実力に格段の差があって一方のボクサーが甚だしくダメージを蒙って試合を停止した場合。
ハ ラウンド進行中チーフ・セコンドがタオルを投入し、もしくはラウンドとラウンドの間に棄権を申し出て、レフェリーがこれを認めた場合。
ニ ドクターが医学的見地から試合停止をレフェリーに勧告した場合。
ヘ 反則を犯したボクサー自身が負傷し試合が停止となった場合。
5 ファウル(反則失格)
審判ルール第89条の故意のファウルを犯してレフェリーが失格を宣し試合を中止した場合。
6 ノー・コンテスト(無効試合)
双方でルール違反を起こしたり、両ボクサーが八百長もしくは馴れ合いないしはコミック・ショー的な試合をし、または再三の警告にもかかわらず試合に誠意を示さなかった場合でレフェリーが双方を失格とした場合。
第26章 レフェリー
第81条 レフェリーはルールに基づき、試合中リング内において試合を管理、支配し、かつ指揮、命令する全権を持つ。したがって、フェアか否か故意もしくは偶然のバッティングか否か、試合を続行するか否か等を決定する最終権限を有する。本ルールに規定されていない事項についても試合に関する限りは、すべてレフェリーの裁断による。
レフェリーはつぎの任務を公正、忠実かつ適切、迅速な判断に基づいて遂行しなければならない。
1 試合中ルールとフェアプレイが厳格に守られるよう監視し、必要なる注意や指示をなし、試合が円滑、真剣かつ最高に行われるよう努力すること。
2 両ボクサーの安全防護を期すること。
第82条 レフェリーは、つぎの権限を持つ。
1 試合がワンサイドの場合は、いかなる段階でも試合を中止して勝敗を決めることができる。
2 負傷その他の理由で、試合続行を不適当と認めた場合は、試合を中止して勝敗を決めることができる。
3 故意であると否とを問わずファウルを犯し、またその他のルールを守らず、フェアでない試合をし、もしくはレフェリーの命令に従わない場合は、警告の有無にかかわらず、試合を中止して、一方または双方のボクサーを失格させることができる。
4 ルールを守らないセコンドおよび必要ならばそのボクサーをも同時に失格させることができる。
5 ボクサーが加撃されることなくしてダウンし、直ちに自力で起き上がらなかった場合は、カウント・アウトまたはそのボクサーを失格させることができる。
6 試合開始のゴングが鳴ってもコーナーから立たず、あるいは立っても試合をせず、もしくは試合することを拒んだボクサーに対しては、これをカウント・アウトすることができる。
7 ダウンさせたボクサーが、レフェリーが指示に従わず、ニュートラル・コーナーへ退くことをしない場合は、カウントを中止することができる。
8 ファウルを犯したボクサーに対し、1点から3点までを減点することができる。
9 反則されたボクサーが、たとえどのような異議を申し立てようとも、その判断に従って適当な中休み(ただし5分間以内)の後、試合続行を命じることができる。
10 確認できない事態(ファウル・ダウン)に対してはジャッジの意見を聞くことができる。
11 リング上に居座り、もしくは占拠して試合進行を妨害するボクサー・セコンドその他に退去を命じることができる。
第83条 レフェリーは、試合遂行に関してつぎの処置をとらねばならない。
1 リング照明、グローブ等が正しく整備され、すべての試合役員が正しい配置にあり、両ボクサーの服装、ノー・ファウル・カップ、バンテージ等に違反のないことを確認する。
2 両ボクサーのチーフ・セコンドを確認し、リングの中央に招いて、グローブを交付する。(ただし、JBCの許可を得た場合には、選手の控え室でインスペクター立ち会いのもとにグローブを着用を許してもよい)。
3 両ボクサーおよびチーフ・セコンドをリング中央に招き、グローブが正しく着用されているかどうかを検査し、試合がJBCルールで行われることを通告し、特に注意すべき反則事項等を簡潔、明確に警告したのち、両ボクサーをコーナーへ退かせ、チーフ・セコンドがリング外に出たことを確認したのち、タイム・キーパーに試合開始の合図をする。
4 レフェリーは、つねに両ボクサーを結ぶ線を底辺とする二等辺三角形の頂点に位置するよう留意して試合を観察し、両ボクサーの中間を横切って反対側に位置してはならない。
5 試合中、レフェリーは、次の6つの命令語を用いる。
A 「ストップ」試合の中止を命じるとき。
B 「ボックス」試合の開始、続行、促進を告げるとき。
C 「ブレイク・アウェイ」(単に「ブレイク」でもよい)クリンチを解くとき。
D 「ダウン」ノック・ダウンを告げるとき。
E 「スリップ」スリップ・ダウンを告げるとき。
F 「タイムアウト」試合を中断し、タイムの停止を必要とする場合。
6 レフェリーは、ボクサーの身体に触れてはならない。また、身体に触れてブレイクさせる際には、特に一方のボクサーを強く押すことなどのないよう公平にしなければならい。
7 レフェリーはボクサーのファウル行為、特にヘッド・バッティング、ホールディング、ロー・ブロー、オープン・ブロー、チョップ・ブロー、ブレイクの際の加撃などのほか、すべての違反行為に対しては必要あらば試合を一時中止して、適当な合図または身振りで警告を与えなければならない。
8 重要でない違反行為および軽度の負傷などに対しては、なるべく試合を中断しないで、ラウンドの間に注意する。
9 試合中のファウルに対して減点する場合には、その減点数をそのラウンドの終了後、両ジャッジとコミッションに通告しなければならない。
10 レフェリーは、試合中ボクサーが負傷した場合、ドクターをリング上に招いて負傷の程度をきき、その意見を参考として続行か否かをきめる。
11 レフェリーは、試合中ノック・ダウンがあった場合には、ダウンさせたボクサーを2つのニュートラル・コーナーのうち遠い方を指示して退かせ、タイムキーパーのカウントに合わせて、そこから続け、ダウンしたボクサーにわかるように、指で秒間を示しながら、1秒毎に大声でカウントしなければならない。10をかぞえたならば、レフェリーは両手を頭上に高く上げ、ついてこれを左右に交叉して数度動かし、試合がノック・アウトで終わったことを表示しなければならない。
12 ダウンしたボクサーが、カウントが10に達しない前に立ち上がっても、その直後、新たなパンチを受けないのに再びダウンした場合は、残されたカウントを再び続けなければならない。
13 ボクサーがダウンした場合は、すべて8までカウントしなければならない。ノー・スタンディングエイトカウントとする。
14 両ボクサーが、同時にダウンした場合には、その一方がダウンしている間はカウントを続ける。もし双方とも10までに立ち上がらなければ、試合はドロー(引分け)とする。
また双方又は一方が、80条3項ハ(ダウン3ルール)に該当する場合も同じくカウントする。この場合双方がカウント・テン前に立ち上がったときは、双方が前記条項に該当する場合は引分け、一方が該当する場合はこの選手をKO負けとする。
15 試合中ボクサーが、有効打によりリングの外に落ちた場合は、もしそのボクサーが自力でリングに戻らない場合には、ノックダウンと同様に相手ボクサーを遠いニュートラルコーナーへ退けさせてからカウントする。
16 各ラウンドが終わったならば、レフェリーは直ちに採点票に記入したのち、両ジャッジの採点票を集めて、これをコミッション席に渡す。これに基づく判定は、JBCがレフェリーに指示する。
17 ファウルで失格したり、または試合をストップしたときは、その理由をインスペクターに通告する。
18 各ラウンドとラウンドの中間に、両ボクサーへ、つぎのラウンドが何ラウンド目であるかを通告する。
19 試合終了後、その勝者がなにびとも分かるような勝者のコーナーを指摘し勝者の片手を上げて表示する。もしドローならば両者の手を上げる。
第84条 偶然のバッティングでボクサーの一方または双方が負傷し、試合続行不可能と判断した場合には、レフェリーは、試合を停止し、つぎの処置をとる。
1 試合の前半(10回戦以上は4ラウンドまで)の場合は引き分け(テクニカル・ドロー)
2 後半(10回戦以上は5ラウンド以降)であるならば、第77条(採点)を適用する。
3 偶然のバッティングにより負傷があった後に試合続行されその負傷が正当な加撃により悪化して試合続行不可能になったときは、その時点が試合の前半(10回戦以上は4ラウンドまで)であれば引き分け、試合の後半であれば第77条(採点)を適用する。
4 ラウンドの途中に試合が停止された場合、停止されたラウンドも採点される。
第85条 レフェリーは、JBCの指示に従ってドクター健康診断を受けなければならない。リングに上がる場合は、見苦しくない、軽快な服装、ボクシングシューズをはきメガネ、指輪、時計、バックルその一切の貴金属類を身に帯びてはならない。
第27章 ジャッジ
第86条 ジャッジは、観客席から離れたリングサイド最前列の中央に向かい合って着席し、試合の推移を冷静かつ公正に観察し、両ボクサーの価値を自主的に判断し、ルールに従って採点し、これを採点票に記入する。また、ラウンドの休憩中に必要あらばレフェリーに進言し、あるいはレフェリーの質問に答えなければならない。
ジャッジは、ボクサーのファウルその他のフェアでない行為を、レフェリーが認めると否とにかかわらず自主的に評価して自己の採点に加えることができるが、レフェリーから通告されたファイルの減点はこれに批判を加えることなくそのまま正確に記入しなければならない。
第87条 ジャッジは、レフェリーを補佐してセコンドのルール違反に警告を与えなければならない。また、試合のラウンド中と休憩中たるとを問わず、なにびとに対してもいっさい話をしてはならない。
第28章 ダウンおよびファウル
第88条 ボクサーが、つぎの状態にある場合はダウンとみなす。
1 有効打により足の裏以外の身体のどんな部分でもリングの床に触れているとき。
2 ダメージを受けたため半ば意識を失ってロープによりかかった状態のとき
3 有効打により身体の全部あるいは半ばがロープの外側に出たとき。
第89条 つぎの各項をファウルとし、これを禁ずる。
1 ベルトライン以下の加撃(ロー・ブロー)
2 ダウン中、またはダウンから立ち上がりつつある相手を打つこと。
3 故意にホールドやクリンチ、あるいはカバーリング・アップを続けること。
4 頭、肩、前膝、肘を相手に衝き当てること(バッティング)
5 咽喉を締めたり、腕または肘で相手の顔を圧したり、足を掬ったり蹴ったり、膝で突き上げたり、あるいは抱きつき、抱え投げ、引っ張り、引き倒したりすること(レスリング)
6 開いたグローブの内側、先端、またはグローブの手首の部分での加撃、グローブ側面上部での下からの突き上げ及び側面下部での上からの叩き下し(チョップ)及びあらゆるバック・バンド・ブロー。
7 身体を一回転させて打つこと(ピボット・ブロー)、腎臓の部分を背面から打つこと(キドニー・ブロー)及びび故意に後頭部を打つこと(ラビット・パンチ)
8 グローブの親指の部分で相手の目を突くこと(サミング)
9 打たれないのに故意にダウンすること。
10 互いに戦意を示さず、あるいは互いに馴れ合いないしはコミック・ショー的試合を行い又は双方あるいは一方による作り試合(八百長)を行うこと。
11 リング・コーナー又はロープに相手を押さえ付けること及び一方の手で相手を押さえながら片方の手で加撃すること。
12 ブレークに際して打つこと及びラウンドの終わりを告げるゴングが鳴ってから打つこと。
13 試合中相手又はレフェリーに対して侮辱的あるいは攻撃的言語を使うこと。
14 ロープを握り、あるいはロープの反動を利用しての加撃、またはロープを不当に使用して相手に不利を与えたり、その他相手に傷害を及ぼすおそれのあるすべての非スポーツマン的なトリックおよび行為。
15 相手のベルトライン以下の危険性のあるダッキング。
(付則)
ルールの運営にあたり、本ルールに明記されていない事項に関しては国際ルールを参照することができる。